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暮らしの法律Q&A

家の壁の塗り替えをしたいのですが、隣の家との距離が50センチほどしかなく、足場が隣のアパートへはみだしてしまうことがわかりました。こんな場合は、塗り替えできないのでしょうか。トラブルは起こしたくないのですが・・・
 

  このようなお隣同士の土地利用関係(相隣関係)については、民法は32か条もの条文を置いているのですが、そのひとつに次のような条文があります。
 
第209条(隣地の使用)
第二百九条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
 
 ご相談のケースは、「建物の修繕」にあたりますから、必要な範囲内で隣地を使用することができることになります。そのためには、原則として、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(隣地が賃借人によって使用されているときの賃借人など)に通知しなければなりません(事前通知制度)。
 
 隣地の使用を拒否された場合はどうでしょうか。この場合は隣地使用権を行使しようとする者は、面倒ですが、裁判所に隣地所有者又は隣地使用者を被告として訴訟(隣地使用権を有することの確認請求や隣地使用を妨害してはならないという不作為請求)を提起する必要があります。勝訴判決が確定すれば、隣地を使用することができます。
 立ち入ることができるのはあくまで土地であり、「住家」については同意が得られない以上立ち入ることはできません。
 
 隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その「償金」を請求することができます。隣地使用に際して避けることができなかった樹木の損傷などに対する補償ですが、隣地使用者が相当使用料を利得したことによる不当利得の償還も含まれる、と解する学説もあります。

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