北海道公安委員会からライフル銃所持の許可を得ていたXさんは、北海道猟友会砂川支部の支部長を務めるとともに、市が設置する鳥獣被害対策実施隊の隊員も務めていました。
市の職員Aから出動要請を受けたXさんが、ライフル銃をヒグマの駆除のために発射したところ、北海道公安委員会からライフル銃の所持についての許可を取り消す処分(本件処分)を受けたため、Xさんは本件処分の取り消しを求める訴訟を提起しました。
第一審は請求を認めたのですが(処分取り消し)、第二審は認めませんでした。最高裁が、令和8年3月27日の判決で、第二審判決を取り消し、Xさんの請求を認めたこと(処分取り消し)は、新聞報道等で皆さんもご存じでしょう。
新聞報道は簡潔なため詳細な事情が分かりませんでしたが、この度、判決文(A4版で14頁にわたる長文)を読むことができました。
駆除の現場にはA職員、B警察官、市の鳥獣被害対策実施隊員であるC隊員も到着しました。Xさんは、A職員に対し、目撃されたヒグマは子熊なので逃がすことを提案しましたが、A職員は住民も生活上の不安を感じて駆除を強く要望しているとして、駆除を依頼しました。
ここからの状況がやや複雑です。ヒグマは市道と私道とが交差する付近にいたところ、XさんはC隊員に対し、市道に移動するように指示し、自身はヒグマを追いました。A職員とB警察官は付近の住民に対し、ハンターが駆除の実施中であることを告げて、家の中に避難するように誘導しました。
Xさんは18メートル先のヒグマに弾丸1発を発射して命中させましたが、弾丸は、ヒグマを貫通し、C隊員が把時していた猟銃の銃床に当たって貫通したのです。
環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室の協力の下に(一社)大日本猟友会が発行した「狩猟読本」には、ライフル実包等を撃つときは、必要以上に遠くまで飛ばないように、前方に安土(あづち)(バックストップとも呼ばれ、外れた弾や貫通した弾を受け止めるための山、崖、高い土手等のこと)があることを確認する旨、及び、ライフル弾等の単体弾は、前方に安土のない限り発砲しない旨の各記載がありますが、現場にはそのような安土はなく、発射地点と建物、会館及び物置との間、並びにヒグマがいた位置と一般住宅との間には、弾丸を遮るに足りるような構造物は存在しませんでした。
最高裁は以下のとおり述べています。
「本件発射行為の際の周囲の状況や周辺の建物及び関係者の位置関係等によれば、本件ライフル銃から発射された弾丸は周辺の建物並びにC隊員、A職員及びB警察官に当たる危険性があったというべきである。実際、上記弾丸はC隊員が把持していた猟銃の銃床に当たって貫通したというのであり、本件発射行為は、C隊員の財産に具体的な被害を生じさせただけでなく、同人の生命及び身体にも危険を生じさせたものである。Xは、本件発射行為に際し、安土の確保等に関する基本的な判断を誤った可能性も否定できない。
しかしながら、他方で、市の鳥獣被害対策実施隊員であるXは、市から出動の要請を受けて現場に赴き、一旦はヒグマを逃がすことを提案したものの、A職員から住民が強く要望していることなどを理由として駆除を依頼され、A職員及びB警察官により付近の住民に対して避難誘導がされるなどする中で本件発射行為に及んだというのである。このような経緯に照らせば、本件発射行為は、非常勤の公務員によって、上記地区の周辺住民等の生命、身体、財産及び生活環境の保護に資するという重要な意義を有する活動の一環として行われたものということができ、経緯に不適切な点は見当たらない。