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19.キャラクターは「著作権」で保護されるのか

 判例雑誌に目を通していたら、故・笹沢佐保氏の股旅小説(一話完結形式の連載小説)の主人公・木枯し紋次郎のキャラクターが著作権法による保護の対象となる「著作物」に該当するのかという問題を取り扱った判決(東京地裁令和5年12月7日判決)に接しました。
 
 今では木枯し紋次郎を知っている方も少なくなってきたと思いますが、私の世代では、中村敦夫が主演した連続テレビドラマが記憶に残っています。長い竹の楊枝をくわえたニヒルな渡世人が主人公で、「あっしにはかかわりのないことでござんす」というのが決め台詞でした。(そう言いながらも関わってしまうのでドラマになるのですが。)
 
 さて、上記裁判で何が争われたのかを、簡略化して(著作権侵害にしぼって)説明します。
被告は「紋次郎いか」(甘辛く煮たスルメイカの足を竹串に刺した商品で、名古屋名物の駄菓子)のパッケージに、三度笠をかぶり、道中合羽を着用し、長脇差を所持し、口に長い楊枝をくわえた人物を描き、「紋次郎」との語を付して販売していました。
 
 これについて、故・笹沢佐保氏の相続人(妻)と、独占的な利用許諾を受けている広告代理店が原告となり、被告に対し、著作権侵害を理由に、上記商品の製造等の禁止、商品の廃棄、損害賠償を求めて提訴しました。
 
 裁判所は、以下のように述べて、原告の請求を認めませんでした(請求棄却)。
「著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載小説においては、当該登場人物が描かれた各回の文章表現それぞれが著作物に当たり、上記登場人物のいわゆるキャラクターといわれるものは、小説の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができない。そうすると、一話完結形式の連載小説に登場するキャラクターは、著作権法2条1項1号にいう著作物ということはできない。」
 
 この問題に関しては、本判決も援用しているのですが、連載漫画に関する最高裁平成9年7月17日判決という先例があります。事案は、連載漫画(水兵帽をかぶり、水兵服を着、口にパイプをくわえ、腕にはいかりを描き、ほうれん草を食べると超人的な強さを発揮する船乗りのポパイを主人公とする連載漫画)の著作権者が、水兵帽をかぶり、水兵服を着、口にパイプをくわえた船乗りが右腕に力こぶを作っている立ち姿を描いた絵の上下に「POPEYE」「ポパイ」語を付した図柄をプリントしたネクタイを販売した者に対して販売差止め、図柄抹消を求めたものでした。
 
 最高裁は次のように述べています。今回の東京地裁の判決はこれを踏襲したものです。
「著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法二条一項一号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。
 けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。」(続く)
 

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