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暮らしの法律Q&A

1.借金の返済ができなくなったら…

半年ほど前に、甥が消費者金融で100万円ほど借金をしていることがわかりました。
自宅だけでなく会社にまで督促の電話がかかってきたので、両親が肩代わりして返済したのですが、今になって以前より強面の人が数人玄関の前に立って「借金を返せ」と迫るようになりました。玄関に落書きもしていくようです。なんのことかわからず、両親も困っているのですが、このような場合、どのように対処したらよいのでしょう。

 甥ごさんの現在の借金総額はどのくらいあるのか、収入はどうなっているのかによって、対処方法(負債の整理方法)も異なってきます。甥ごさんに定期的に確実な収入があるのであれば民事再生手続(個人再生)も考えられるのですが、状況からすると自己破産の申立てが適当かもしれません。とにかく早急に、甥ごさん本人が責任を自覚して弁護士に相談に行くべきです。その際には、資料を整理して債権者一覧表ぐらいは作成し、資料とともに持参して下さい。いくらご両親が気をもんでも、本人が真剣に債務整理を考えなければどうにもなりません。
 
 甥ごさんに財産が何もないとすれば破産手続自体は簡単に終わります(同時廃止といいます)。その後に(裁判所によっては破産申立と同時に)免責の申立てをします。これに対し、裁判所が免責決定を出してくれれば債務を支払う必要がなくなります。
 裁判所は、法定の免責不許可事由がない限り免責を許可することになっていますが、不許可事由の中には、返済できないことを知りながら詐術を用いて借金したこととか、浪費や賭け事のために借金したことなどが含まれていますから、甥ごさんにそのような事実があれば免責が許可されない可能性もあります。ただし、裁判所は、そのような事実があっても債務者に誠意が見られれば裁量により免責を許可してくれることがあります。

2.連帯保証人を頼まれたのですが…

甥がマイホームを買うのですが、この連帯保証人を頼まれてしまいました。
連帯保証人が負う責任の範囲を教えて下さい。

保証人とは、融資を受けた人(主債務者)が借入金を返済できなくなった時に、主債務者に代わって貸主(債権者)に返済する義務を負担する者のことです。
 「連帯」保証人というのは、そのなかでも責任が重く、「先に主債務者に催促してくれ」とか「先に主債務者の財産から差押えてくれ」などとは言えません。
 連帯保証人の負う責任の範囲は、債権者と連帯保証人との間の保証契約の内容によって決まるのですが、通常は、主債務者が債権者に対して負担している責任と同一です。ですから、残元本はもちろん、滞納利息や遅延損害金についても支払い義務を負います。
 注意すべきことは、ご質問の例で、甥ごさんがマイホームに抵当権を設定していても、連帯保証人の側から、「先に抵当権を実行してくれ」とは言えないことです。また、先に抵当権が実行されても、それで足りなければ、連帯保証人が不足分を支払わなければなりません。
 このように連帯保証人の責任は極めて重大ですから、いくら甥ごさんの頼みでも、慎重に考えられたほうが良いと思います。
 私のご相談者のなかにも、他人の連帯保証人となったために自己破産にまで追い込まれたケースが何件もありました。

3.亡母の遺言書が出てきましたが…

母親が亡くなったところ、金庫から遺言書が出てきたのですが、そこには「財産はすべて次男の嫁に遺贈する」とありました。
 母はほとんど認知症の状態でしたし、次男の嫁はたまに来るだけの疎遠なもの。こんな遺言を守らなくてはいけないのでしょうか。
 父親はすでに亡くなっており、子どもは私(長男)と弟(次男)の2人です

 遺言にご不審を持たれ、ご不満なのはよくわかりますが、そう簡単にはいきません。まず、遺言を発見した相続人は、それが公正証書遺言である場合を除き、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出して「検認」を受けなければなりません(封印のある遺言書はそれまで開封してはいけません)。
 
 しかし、検認はその遺言書の有効性を判定するものではありませんから、その遺言書が偽造されたものであるとか、お母さんが正常な判断能力がない状態で作成したものであるとか、法定の要式に違反している場合には、地方裁判所に対して遺言無効確認の訴えを提起することができます。そして、遺言を無効とする判決が確定すれば、遺言は存在しないことになります。
 もし、遺言書の有効性は認めざるを得ない場合でも、法定相続人として遺留分減殺請求権を行使することができます。ご質問の例では、各相続人(長男と次男)の法定相続分(各2分の1)の半分が各相続人の遺留分となります。ですからご質問の場合にもこの遺留分を行使することにより、次男のお嫁さんから遺産の一部を取り戻すことができます。
 なお、遺言書を破棄したり、隠したりすると、相続資格を失いますので注意してください。

4.新入社員を募集する時に

弊社では、新入社員を募集しようと考えていますが、最初のうちは見習社員として雇い、3ヶ月ほどで正社員にしたいと思います。ただ、あまり見込みがなければ正社員にするのは経営的に苦しいものがあります。見習い後に解雇することはできるのでしょうか。

正規従業員を採用(本採用)する前に、一定の試用期間(見習期間)をおいて、この間に正規従業員としての適格性を判断し、使用者が適格性なしと判断したときは、試用期間終了後に本採用を拒否する、という制度は大多数の企業でとられています。
 このような試用契約の性質について、判例は基本的に使用者の解約権が留保された雇用解約(解約権留保付労働契約)と解しています。したがって、本採用の拒否は、雇入れ後における解雇にあたるので、通常の雇入れ拒否のように使用者の自由にはできないということになります。
 それでは、使用者はどういう場合に留保解約権を行使して本採用を拒絶できるのか、が問題となりますが、判例は、「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」としています。
 もちろん、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が使用者には認められますが、使用者は、本採用を拒否する場合には、勤務成績不良、態度不良など、適格性欠如の具体的根拠を示す必要があり、その判断の妥当性が客観的に判定されることになります。

5.一方的な解雇通告を受けました…

先日、会社から私の所属する事業部門の閉鎖が決定したので、「やむを得ない事業の都合によるときは従業員を解雇できる」という就業規則の定めに基づき解雇する、との一方的な通告を受けました。
 確かに会社の経営が苦境にあることは承知していますが、私にも生活があります。このような解雇は許されるのでしょうか

 判例は、会社の解雇権の行使が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することが出来ない場合には、「権利の濫用」として無効となる、としています。この関係で、質問者の方があわれたような、いわゆる「整理解雇」(指名解雇)が合理性を持つとされる要件として、以下のことが必要とされています。
 第1は、高度の経営上の困難から、人員削減措置の必要性が認められることです。
 第2は、人員削減の手段として整理解雇を選択する必要性があることです。会社は、他の手段(配転、出向、希望退職の募集など)によって整理解雇を回避する信義則上の義務を負っていると解されています。
 第3は、被解雇者選定の妥当性です。会社は整理解雇が必要とされる場合でも、恣意的に被解雇者の選定を行ってはならず、客観的で合理的な整理基準を公正に適用しなければなりません。
 第4は、手続の妥当性です。労働協約に労働組合との協議条項がない場合でも、会社は労働組合や労働者に対して、整理解雇の必要性とその時期、規模、方法などを説明し、誠意をもって協議する信義則上の義務があると解されています。
 質問者の方の場合には、配転等の他の手段がなかったか、被解雇者選定は公正であったか、誠意を持った協議がなされたかが問題となりますが、解雇権の濫用に当たる可能性もあります。弁護士や組合などに相談されると良いでしょう。

6.どんなときがセクハラになる?

 しばしば上司からお酒を飲みにいこうと誘われます。たまに付き合うと、夜中の1時、2時までになります。友人は「そうした行為はセクハラだから会社に相談すればいい」といいますが、本当にセクハラに当たるのでしょうか。

 セクシャル・ハラスメント(性的嫌がらせ)は、大きく2つの類型に分けられます。
 ひとつは、対価型と呼ばれるタイプで、例えば「交際を断ればクビにする」というように、労働条件上の利益または不利益の代償として性的働きかけが行われる場合です。
 もうひとつは、環境型と呼ばれるタイプで、身体に接触するなどの身体的ハラスメント、性的な侮辱発言をするなどの言語的ハラスメント、ポルノ写真を見ることを強要するなどの視覚的ハラスメントなどが含まれます。
 セクハラは刑法上犯罪とならない場合でも、不法行為として損害賠償責任を問われるケースが増えており、慰謝料も増額傾向にあります。
 しかし、環境型セクハラにおいては、どのような行為がセクハラになるのか、その限界は難しい問題です。ご質問のケースでは、上司の日頃からのあなたに対する言動、誘い方、飲んでいる最中やその前後の言動などが重要な判断要素となってくるでしょう。さらに、同じような行為であっても、被害者の主観的要素(嫌がっているかどうか)によって、セクハラになるかどうかが決まってくるという面もあります。あなたが明確に拒否しているのに、執拗に誘うようであれば、たとえそれが親しさの表現とか、個人的な好意による場合であっても、セクハラと判断されることもあります。
 まずは上司に、嫌なら嫌とあなたの意思をはっきり伝えてみてはどうでしょうか  

会社の帰りに、コンビニに寄ってビールを買い、外に出たところでバイクに引っ掛けられるという事故にあってしまいました。労災の適用が受けられるものだと思っていたら、ダメだと言われてしまいました。何とかならないでしょうか。

 労働者災害補償保険法は、労働者の「通勤」による負傷等についても労災と同一水準で保険給付が受けられる制度として「保護通勤災害」制度を設けています。ここでいう「通勤」とは、労働者が、①就業に関し、②住居と就業との場所との間を、③合理的な経路および方法により往復することをいいます。
 労働者が、そのような往復の経路を逸脱し、またはそのような往復を中断した場合においては、その逸脱または中断の間およびその後の往復は「通勤」には当たりませんが、その逸脱または中断が、「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの」を、やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、その逸脱または中断の間を除き、「通勤」に当たります(同法7条)。
 質問者の場合には、いつもの往復の経路の途中にあるコンビニに立ち寄ったのだとすれば、往復の「中断」が問題となります(もし、いつもの経路をはずれていたとすれば「逸脱」が問題となります)。
 しかし、帰途に、往復経路上のコンビニでタバコ、雑誌、ビール等を購入するような、労働者が通常、通勤の途中で行う「ささいな行為」は「中断」として取り扱う必要はない、と解されています。
 また、厚生労働省令が定める「日常生活上必要な行為」は4つあるのですが、そのなかに「日用品の購入その他これに準ずる行為」があげられています。帰途、コンビニに立ち寄ってビールを購入する行為はこれにも該当するでしょう。
 いずれにしても、質問者の場合には保護通勤災害に該当する可能性が高いと思われます。一度、弁護士か、労働基準監督署に相談してみてはどうでしょうか。

母親の痴呆が進み、失禁や昼夜の逆転がひどくなりました。介護施設への入所も考えているのですが、妻の疲れがひどいので、とりあえず私も休みをとりたいと思ってます。
このような場合に、介護休業を利用すると給料は減ってしまうのでしょうか。

 「育児・介護休業法」によれば、労働者は、連続する3ヶ月の期間を限度として、要介護状態にある対象家族ひとりにつき1回の介護休業をすることが認められています(介護休業制度)。
 
 これが認められるのは、「要介護状態」にある対象家族を介護する労働者ですが、要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。
 「対象家族」とは配偶者、父母、子、配偶者の父母、労働者が同居しかつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫のことです。ただし、日々雇い入れられる人および期間を定めて雇用される人は対象になりません(もっとも、労働契約の形式上では期間を定めて雇用されている人であっても、実質上は期間の定めのない契約と異ならない状態になっている場合には対象となります)。ですから、ご相談者の場合には介護休業制度が適用されると考えてよいでしょう。
 介護休業制度を利用しようとする場合には、①対象家族の氏名および労働者との続柄、②介護を必要とする理由、③休業開始予定日および休業終了予定日を明らかにして、休業開始予定日の2週間前までに会社(事業主)に申し出ることが必要です。
 事業主は、労働者が介護休業の申し出をしたこと、または介護休業をしたことを理由として、解雇や減給等の不利益な取扱いをしてはなりませんが、休業期間中の給料については、育児・介護休業法では格別の手当がなされていないので、休業中の給料は原則として支払われません。
 ただし、雇用保険から介護休業給付金が支払われます。給付額は、介護休業前の賃金の40%相当額です(上限額と下限額が定められており、事業主から賃金が支払われた場合には、給付額は調整されます。

当社の退職金規程には、懲戒解雇の場合には退職金を支給しないという規定があります。このような規定は有効なのでしょうか。
また懲戒解雇であれば、どのような場合であっても退職金は支給されないのでしょうか

  「懲戒解雇」は究極の懲戒処分とでもいうべきものであり、通常、解雇予告もなく即時になされ、予告手当も支払われません。それのみか、ご質問にあるとおり、退職金規程等に懲戒解雇の場合には退職金の一部または全部を支給しないという規定(不支給条項、没収条項)が置かれていることが一般的です。
 
 退職金は功労報償的性格を有していますから、右のような規定が公序良俗(民法90条)に違反して無効とまではいえませんし、賃金全額払の原則(労基法24条)にも違反しないと解されています(退職金請求権は退職時に初めて成立するので、賃金全額払の原則の問題ではないとされています)。
 しかし、退職金には賃金の後払的性格もあるとされていますし、たとえ懲戒解雇自体が有効であったとしても(懲戒解雇は普通解雇よりも労働者に大きな不利益が生じますので、普通解雇よりも厳格に解雇権濫用法理〈労基法18条の2として明文化〉が適用されます)、どのような場合にも没収条項を適用して退職金不支給が是認されるわけではありません。
 たとえば、トヨタ工業事件の東京地裁判決(平成6年6月)は、「退職金の全額を失わせるような懲戒解雇事由とは、労働者の過去の労働に対する評価を全て抹消させてしまう程の著しい不信行為があった場合でなければならないと解するのが相当である」と述べています。したがって、懲戒解雇が有効であったとしても、退職金請求権を失わないケースもあり得るわけです。

10.突然パートを解雇されたら・・・

パートタイマーで働いて5年がたちます。今まで、とくに更新などの手続きもなく雇われていました。ところが突然、課長から「来月から来なくてよい」といわれてしまいました。どうしたらいいのでしょうか。

 「パートタイマー」の定義はさまざまありますが、短時間労働者法では、「1時間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者」と定義しており、相対的な短時間労働者という理解が一般的です。労働基準法9条は、「労働者」とは「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義していますから、パートタイマーも原則として労働基準法上の「労働者」に該当します(したがって、労働基準法はもとより、雇用機会均等法、最低賃金法、労災保険法等の労働法規も全面的に適用されます)。
 雇用期間の定めのないパートタイマーの解雇については、正社員と同様に解雇制限(労基法14条)や解雇予告(20条)はもとより、解雇権濫用条項(18条の2)の適用がありますので、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効です。
 期間の定めのあるパートタイマーについては、契約期間の満了により雇用契約が終了するのが原則ですが、期間の定めのある労働契約が反復更新されて期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には、雇止め(更新拒絶)は、実質的には解雇と同一と見るべきであるから、解雇に関する論理が類推される、と解されています(名古屋地判平成7年3月24日その他)。したがって、このような場合には、雇止めにも社会通念上相当とされる合理的な理由が必要となり、それがない場合に更新拒絶は無効となります。

先日、出張の帰りに温泉旅館で風呂に入ろうと思い、現金50万円が入ったかばんをフロント前にいた係員に預けました。脱衣室のロッカーでは心配だったためです。ところが、預けた係員がかばんを紛失してしまいました。旅館側は、現金が入っていることを知らなかったので過失はないといいはります。そうでしょうか。納得がいきません。

 当事者の一方が相手方のために物を保管することを内容とする契約を「寄託契約」(民法657条)といいます。旅館があなたのかばんを預かる契約は、この寄託契約です。
 受寄者(旅館)は寄託物(かばん)を保管して、寄託者(あなた)に返還する義務を負います。そして、商人(旅館はこれにあたります)がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、無償であっても「善良なる管理者の注意」を払って保管に当たらなければなりません(商法593条)。
 とくに、旅館、飲食店、浴場その他、客の来集を目的とする施設の営業主は、客から寄託を受けた物品の減失または毀損(きそん)について「不可抗力」によることを証明しない限り損害賠償責任を免れません(商法594条1項)。
 ところが、「貨幣、有価証券その他の高価品」については、客がその種類および価額を「明告」して寄託しないと、施設の営業主は寄託物の滅失または毀損による損害賠償責任を負わないという特則があります(商法595条)。
 あなたの場合も、明告していませんから、かばんはともかく、現金については旅館に損害賠償を求めることができないことになりそうですが、判例では、商法595条の規定は寄託契約の債務不履行による損害賠償責任に適用されるもので、不法行為による損害賠償責任には適用されないとしています。
 したがって、あなたは、フロント係員が通常人として払うべき注意を怠ったこと(過失)を立証できれば、旅館の営業主に対し、不法行為に基づく損害賠償責任(民法715条の使用者責任)を追及することができます。
 ただし、あなたにも明告を怠った不注意があるので、過失相殺される可能性があります 。

友人に50万円を貸しました。簡単な覚書も交わしたのですが、友人は元金はもちろん利息もいっこうに返してくれません。返済期限は過ぎています。返済には時効があると聞き、どうしたものか困っています。

 まず、「覚書」の内容が問題です。①当事者(貸主、借主)の表示、②貸付日、③貸付額(元金)、④返済日(元金)、⑤利息支払の約定と利率、⑥遅延損害金の利率が明記されていて、そこに本人(借主)の署名・捺印があれば理想的です。タイトルは「覚書」であっても、これだけの内容が記載されていれば、立派な金銭消費貸借契約書といえます。相手が友人ですと、口約束だけで貸してしまうこともありますが、いざというときに証明に窮することがありますので、「覚書」をとっておかれたのは賢明でした。
 ご相談者の場合には、おそらく①から④は記載されており、本人(借主)の署名・捺印もあるのだと推測します(捺印がなくても、署名があれば大丈夫です)。⑤が全く記載されていない場合には、返済日までの利息は請求できません。利息は当然には発生しないのです。利息支払の約定は記載されているが、利率の記載がない場合には年5%となります(法定利率)。⑥についてですが、遅延損害金は、それを払う旨の定めや利率の定めがなくても、約定の返済日の翌日から当然に年5%の割合で発生します。約定利率が法定利率を超えるときには約定利率で計算されます。
 さて、消滅時効ですが、友人との間の貸借ですから、返済日の翌日から10年間です。時効の完成が間近に迫っているときには、とりあえず内容証明郵便で催告しておいてから、その後6ヶ月以内に裁判上の手続きをとる必要があります。すでに10年以上が経過していたらどうすべきでしょうか。諦めないで、請求をしてみてください。もし友人が「払うから待ってくれ」とでも回答してくれば、時効援用権を喪失しますので。
 
※時効援用権の喪失とは・・・たとえ消滅時効が完成していても、債務者が債務の存在を自認する行為(債務の承認)をした場合には、信義則上、時効を援用することができなくなる、と解されています(判例)。これを時効援用権の喪失といいます。

13.自動車保険に未加入のバイクに引っ掛けられて骨折。健康保険を使いたいのだが・・・

自宅近くでバイクの少年に引っ掛けられ、転倒した拍子に腕を骨折し入院しました。少年は自動車保険に入っていなかったため、健康保険で治療したいと申し出たのですが、病院から断られてしまいました。こんなときは、どうしたらいいのでしょう。

 バイクは自動車保険に入っていなかったということですが、自賠責保険(強制保険)には入っていたという前提でお答えしましょう(ごくまれに、車検切れで、自賠責保険すら付保されていないケースもないわけではありませんが)。
 結論からいえば、交通事故であっても病院に対し健康保険証を呈示することにより、健康保険を利用することができます。
 ただし、その場合には、健康保険組合(国民健康保険の場合には市町村)に対して「第三者行為災害(傷病)届」を提出することが必要です。健康保険組合(市町村)は病院に対して支払った治療費を、自賠責保険に対して求償(回収)することになります。
 ところが、病院のなかには、交通事故による傷害の治療に健康保険を利用することに難色を示すところがあるのも事実です。
 なぜかというと、健康保険を利用しない自由診療報酬は、同じ内容の治療であっても、健保基準の1.5倍から2倍程度まで容認されているからです。病院としては健康保険より自由診療で治療したいわけです。もちろん、健康保険の適用がない治療というのもありますが、骨折の治療ではまず考えられません。
 自賠責保険には上限額(傷害で120万円)がありますから、それを超えると自賠責保険からは支払われません。バイクに任意自動車保険が付保されていれば、そこから支払われますが、その場合でも「過失相殺」が行われる可能性を考えれば、治療にはぜひ健康保険を利用すべきです。
 なぜかというと、たとえば治療費100万円、休業損害100万円、慰謝料100万円、合計300万円の損害が発生し、過失相殺率30%としましょう。この場合、賠償金は210万円<=300万円×(1-0.3)>となりますが、そこから治療費が差し引かれますから、手取り額は110万円となります。ところが、同じ治療が自由診療で行われ、治療費として2倍の200万円がかかったとすれば、手取り額は10万円となってしまいます。健康保険の利用は被害者の手取り額を増やす結果となるのです。
 病院に対して健康保険証を呈示して強く健保診療を申し入れてください。それを受け容れないような病院であれば、転院も考慮すべきでしょう。
※過失相殺とは・・・事故が起きた原因について両方に過失がある場合、加害者と被害者が損害を公平に分担するため、加害者の損害賠償額から被害者の過失相当割合を減額すること

14.日照権の侵害にはどんな方法で対抗できる?

うちの南側の駐車場にマンションが建つことになりました。周辺住民に対する説明会が開かれ、その中で日影図というものも配付され、日照規制についても建築基準法に適合している建物であることが説明されました。しかし、私の家の日照は圧倒的に悪くなります。どうしたらよいでしょうか

 南側隣地が駐車場ということですから、これまでは日照に大変恵まれていたようですね。ただ、土地に建物を建設することは基本的には土地の所有者の自由ですから、これまで享受していた日照の全部を権利として主張するわけにはいきません。しかし、所有権の行使といえども、周辺の人たちに与える結果が度を越えることは許されません。
 初めて日照侵害を認めた判例として有名な世田谷日照侵害事件の表現を借りると、「社会観念上一般的に被害者において忍容するを相当とする程度を越えたと認められるとき」は、権利の行使であっても違法性を帯びることになります(受忍限度論)。世田谷日照侵害事件は、建物の増築工事が建築基準法に違反していた悪質なケース(無届で容積率に違反)でしたが、本件では建築基準法をクリアしているようです。建築基準法による日影規制は行政上の規制ですが、規制地域内の規制対象建物であれば(おそらくそうなのでしょう)、規制違反がないことは受忍限度内であることを一応推認させます(自治体の条例に基づく日照規制もありますが、こちらにも適合しているものと思われます)。
 しかし、現実の日照被害が著しく大きいような場合には、他の諸事情も勘案して違法性が認められる可能性もあります。
 違法性が認められるときには損害賠償請求が認められますが、違法性がとくに著しい場合には、建築差し止め請求や設計変更請求などが認められることもあります。後者を求めるなら、建物が完成する事を阻止するためにまず工事禁止の仮処分申請を行うことが一般的です。なお、裁判ではなく、自治体の建築紛争調停委員会などに調停を申請する方法もあります。

パソコン教室に申し込んだのですが、2か月しか行かずにやめてしまいました。もう今後行くつもりはないのですが、一括で支払った入会金、授業料を返してもらうことはできないのでしょうか。

 特定商取引法という法律(改正前は訪問販売法といいました)では、役務提供事業者(この場合はパソコン教室の経営会社)が特定継続的役務(パソコンの授業)を政令(特定商取引法施行令)で定める期間を超える期間にわたり提供し、相手方がこれに応じて政令で定める金額を超える金銭を支払う契約(特定継続的役務提供契約)については、通常のクーリング・オフのほかに、中途解約権が認められています。
 何が特定継続的役務に該当するかは政令で指定されており、現在、①エステティック、②語学教育、③家庭教師等、④学習塾、⑤パソコン・ワープロ教育、⑥結婚情報サービスがそれに指定されています。パソコン教育については、契約期間が2月を超えて、支払金額が5万円を超える契約が、特定継続的役務提供契約とされています。
 あなたのパソコン教室との契約内容が必要条件を満たして特定継続的役務提供契約に該当すれば、中途解約権が認められるわけです。
 中途解約権が認められると、クーリング・オフ期間(適式な契約書面の受領日から8日以内)経過後であっても、将来に向かって契約を解除できます。解除には理由は必要なく、方式も(書面によらなければならないクーリング・オフとは異なり)自由ですが、配達証明付き内容証明郵便で行うのがベストです。
 解除した場合、未履行分の役務に対応する対価(授業料)の返還を求めることができます。入会金等の初期費用が、「役務提供の対価」といえるかどうかが問題となりますが、初期費用として合理的な金額を超える部分については、「役務提供の対価」とみるべきでしょう。そうでないと入会金等を高くして授業料を安くするという脱法行為が可能となります。
 初期費用として合理的な金額は、「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」として政令に規定されている1万5千円が目安となるでしょう。
 なお、損害賠償額の予定や違約金の定めがある場合でも、事業者は「契約の解除によって通常生ずる損害の額」として政令に規定されている金額(5万円または契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額)および、これに対する法定利率(経産省の解説では年6%)による遅延損害金(いわゆる遅延利息)の額を超える金額を請求することはできません。

家の壁の塗り替えをしたいのですが、隣の家との距離が50センチほどしかなく、足場が隣のアパートへはみだしてしまうことがわかりました。こんな場合は、塗り替えできないのでしょうか。トラブルは起こしたくないのですが・・・

  このようなお隣同士の土地利用関係(相隣関係)については、民法は30か条もの条文を置いているのですが、そのひとつに次のような条文があります。
「第209条(隣地の使用請求)」
①土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
②前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
 ご相談のケースは、建物の修繕にあたりますから、隣人に対し、必要な範囲内で隣地の使用を請求することができることになります。この場合の「隣人」とは、権原に基づいて隣地を現に占有し利用している者のことであり、もし隣地が賃借人によって利用されているときには、土地所有者ではなく、賃借人が相手方となります。
 使用が拒絶された場合には、面倒ですが、裁判所に隣人を被告として訴訟を提起し、判決で被告(隣人)に対して使用の承諾を命じてもらわなければなりません。勝訴判決が確定すれば、被告は承諾したものとみなされます。
 ご相談のケースでは必要ないと思いますが、隣人の承諾があれば、「住家」にも立ち入ることができます。ただし、この場合の「承諾」とは、あくまで隣人の任意の承諾を意味しており、裁判所の判決をもって承諾に代えることはできません。
 隣人が損害を受けたときは、隣人は「償金」を請求できます。隣地使用に際して避けることができなかった樹木の損傷などに対する補償ですが、隣地使用者が相当使用料を利得したことによる不当利得の償還も含まれる、と解する学説もあります。そのように解すれば、とくに樹木の損傷などがなくても「償金」を請求できることになります。

17.判断能力が低下した身内の財産を守るための制度はある?

遠方にすむ父に最近軽い認知症の症状が見られるようです。私の家に呼ぶまでの間、詐欺などにあわないよう生活上のさまざまな判断について信頼の置ける人に任せたいのですが、自治体に頼むことはできないのでしょうか。

  父上の判断能力の減退はどの程度でしょうか。判断能力減退が重度であれば“成年後見人”を、中程度であれば“保佐人”を、軽度であれば“補助人”を保護者として付けることができます(成年後見制度)。いずれも、あなたから家庭裁判所に対して審判を申し立てます。
 
 父上の場合には、判断能力の減退は軽度のようですから、保佐制度か補助制度を利用することになるでしょう。
 
 保佐開始の審判を受けると、父上(被保佐人)が法定されている一定の重要な行為(借財・保証、不動産売買、改築・大修繕などが法定されていますが、審判で法定の行為以外の行為を含めることができます)をするには保佐人の同意が必要となります(同意を得ないでしたものは取り消すことができます)。また、本人の療養看護や財産に関する特定の法律行為(こちらは法定の行為に限られません)について保佐人に代理権を付与する旨の審判を求めることもできますが、これには本人(父上)の同意が必要です。
 
 補助開始の審判には本人(父上)の同意が必要です。また、同時に、特定の法律行為(被保佐人について法定されている行為の一部に限ります)をするには補助人の同意を要する旨の審判(同意を得ないでしたものは取り消すことができます)、または特定の法律行為(こちらは法定の行為に限られません)について補助人に代理権を付与する旨の審判がなされます。いずれの審判についても本人(父上)の同意が必要です。
 
 自治体には情報提供・相談窓口はありますが、自治体が保護してくれるような制度はありません(身寄りのない要保護者については市町村長に審判開始の申立権が付与されています)。都道府県社会福祉協議会が支援する地域福祉権利擁護事業というものもありますが、その援助内容は、福祉サービス利用援助、日常的金銭管理サービス、書類等の預かりサービスであって、成年後見制度とは異なります。なお、相談窓口としては、大規模弁護士会に高齢者・障害者総合支援センターが置かれており(東京弁護士会の「オアシス」等)、司法書士会の成年後見センター(リーガルサポート)もあります。
 
 もし、父上が問題のある契約を締結させられた場合には、消費者契約法に基づく取消し、特定商取引法によるクーリング・オフや中途解約等ができることがありますので、検討してください。

18.通信販売で購入した商品は、クーリング・オフが難しい?

最近認知症の症状が出てきた母が、テレビショッピングで布団を買ってしまったことが発覚しました。購入後2週間ほどたっていましたが、不要なので理由を説明して返品したいと願い出たところ「できない」といわれてしまいました。納得できないのですが…。

 布団(寝具)のテレビショッピング(「布団(寝具)の」と断ったのは、政令(※)指定商品制度が採用されているからです)は、特定商取引法で規制されている「通信販売」に該当します
 通信販売は、消費者が商品を購入するかどうかを選択するための情報が、広告(紙媒体だけではなく、テレビ、インターネット、電子メールなどを含みます)だけに限られるところに特色があります。しかし、消費者がそのような広告を見て自発的に申込みができるという点で、不意打ち性・攻撃性の高い訪問販売・電話勧誘販売などとは異なります。そのため、通信販売については、特定商取引法の規制も広告規制が中心で、クーリング・オフ制度は規定されていません。したがって、特定商取引法に基づくクーリング・オフをすることはできません。
 しかし、特定商取引法は、販売業者が販売条件について広告をするときは、法定の事項を表示しなければならないと規定しており、その事項のなかに「商品の引渡し後におけるその引取り又は返還についての特約に関する事項(その特約がない場合には、その旨)」が規定されています。「返品特約」に関する事項です。「返品特約」とは、「商品に瑕疵(かし)がなく、販売業者に契約違反のない状態において返品を認めるとする特約」のことです。
 相談者の方は、業者から「返品できない」といわれたとのことですが、広告において「返品不可」と表示されていたのでしょうか。もし、そうであれば返品はできません。また、返品可能期間(クーリング・オフとは異なり、業者が自由に決めることができます)が表示されており、既にその期間を経過している場合も返品できません。
 問題は、返品の可否について表示がなされていないときです。特定商取引法は、返品特約がない場合にもその旨を表示するように規定しているのですから、これは表示義務違反ということになります。そして、このような場合は、返品は可能であると解釈されます。経済産業省も、「返品特約がない場合にはその旨を広告に明示することが求められていることから、仮に返品特約に関する事項についての記載が一切ない場合で、消費者が返品可能と信じていたような場合には、特定商取引法の趣旨を踏まえ、販売業者は、その消費者からの返品の要請に適切に応ずるべきものと考えられます」としています。
※政令指定商品制度=クーリング・オフできる対象を、商品55、権利3、サービス17種類と指定している制度

ヘッドハンティングで同業の外資系の会社から誘いを受けています。給料もいいので会社を移りたいのですが、問題はないでしょうか

 期間の定めのない雇用契約(労働契約)を労働者から解約すること(辞職)は自由であり、使用者(会社)から解約する場合(解雇)のようなさまざまな制約はありません。2週間の予告期間を置くことが必要とされているだけです(民法627条1項)。辞職の理由も必要ではありません(転職の自由)。ただ、次のような問題があります。
 
 就業規則等のなかには、一般的に、在籍中の秘密保持義務や競業避止(ひし)義務が規定されていますが、使用者としては、(業種にもよりますが)雇用契約終了後にも、労働者に対して同じ義務を課したいと考えるのは当然です。
 
 そこで、就業規則等により退職後の秘密保持義務と競業避止義務を負わせることがあります(義務違反に対しては、退職金の不支給あるいは減額を規定していることが多いようです)。退職の際に、社員に対して秘密保持あるいは競業避止の誓約書を書かせることもあります。
 競業避止契約は秘密保持義務を担保する意味がありますので、秘密保持契約とワンセットになっていることが多いようです。
 秘密保持契約は原則として、有効と解されています。しかし、会社が秘密にしたいと考える情報は、不正競争防止法2条6項(※)に規定されている「営業秘密」から、企業戦略、社内の不祥事等々さまざまであり、これらの情報のどこまでが法的保護に値するのかは難しいところです。秘密保持契約において、漏洩を禁止する情報が特定されている場合にはそれによることになりますが、特定されていない場合には、当該情報の保護の必要性から合理的範囲に限定されることになるでしょう。
 競業避止契約のほうは、もろに労働者の職業選択の自由と衝突しますので、その有効性については慎重に判断されています。
 判断要素として重要なものをあげると、
 
①制限期間(一概にはいえませんが、2、3年間が目安でしょうか)
②制限される職種の範囲
③制限される場所的範囲
④代償措置の有無
があります。
 これらの要素を、会社の利益、労働者の不利益、社会的利害(一般消費者の利害)の視点から判断していくことになります。
 なお、自分が転職することは自由ですが、背信的なやり方で(単なる勧誘というような域を超えて)部下や同僚を引き抜く行為は不法行為(民法709条)となることがあります。
※不正競争防止法2条6項:この法律において、「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

代々の墓は長男が相続すると決まっているのでしょうか。田舎の墓を守ることは現実的には難しいので拒否したいのですが・・

 被相続人(相続される人)が死亡すると、被相続人の財産(相続財産=遺産)は、相続人に承継されます。誰がどのような順位で相続人となるか、同順位の相続人が数人あるときはその相続分はどうなるかなど、遺産承継のルールが法律に定められています(民法887条、889条、民法900条)。
 これに対し、「系譜、祭具及び墳墓」(合わせて祭祀財産と称します)の所有権は右のルールの例外とされ、「祖先の祭祀を主宰すべき者」(祭祀主宰者)が承継することになります。系譜とは、檀家の記録などのこと。祭具とは、位牌、仏壇、神棚などのことです。墳墓とは、墓石や墓碑のことですが、墳墓を所有するための敷地(墓地)も、墳墓と密接不可分の関係にある範囲で墳墓に含まれます。
 祭祀主宰者は、第一に、被相続人の指定により定まります。指定の方法には限定がなく、遺言に限りません。第二に、被相続人の指定がない場合には、被相続人の住所地の慣習により定まります。第三に、被相続人の指定もなく、慣習も明らかでないときは、家庭裁判所の審判により定まります(民法897条)。
 したがって、あなたの場合も、被相続人の指定があれば祭祀主宰者となりますし、指定がなくても、被相続人の住所地に長男が祭祀主宰者となる慣習があれば、祭祀主宰者となり、祭祀財産の所有権を承継します。祭祀財産の承継には、遺産相続のような放棄の規定はないので、承継を拒否することはできません。慣習が明らかでない場合には、家庭裁判所の審判により定まりますが、その際には、承継者と被相続人との身分関係のほか、過去の生活関係及び生活感情の緊密度、承継者の祭祀主催の意思や能力、利害関係人の意見等、諸般の事情が総合的に斟酌(しんしゃく)されます。
 もっとも、以上は、あくまで祭祀財産の所有権を祭祀主宰者が承継するということであり、祭祀主宰者が法的に祭祀をなす義務を負うわけではありません。しかし、そうはいっても、あなたが現実的に祭祀を主宰できないのであれば、田舎に居住されているほかの方に祭祀主宰者となってもらうのが妥当でしょう。祭祀主宰者の資格には制限がなく、相続人でなくてもかまいません。親族関係の有無や、氏の異同も問題となりません。ただ、相続人の合意により祭祀主宰者を定めることができるかについては、裁判例が分かれていますので、家庭裁判所における調停または審判によるほうが無難でしょう。

亡くなった父の土地を弟と相続することになりました。そこに家を建てようとローンの相談を銀行にしたところ、土地を分筆しているか聞かれました。相続したら分筆しなければならないのでしょうか。

 ご存知のとおり、土地・建物の権利関係を公示するために不動産登記制度が設けられていますが、土地は連続しているので、地表を人為的に区画して、一個の土地として登記します。このように人為的に区画された一個の土地のことを「一筆」の土地といいます。
 「分筆」というのは、一筆の土地として登記されている土地を分割して、それぞれの土地を一筆の土地として登記することです。これとは逆に、数筆の土地を合併して一筆の土地として登記することを「合筆」といいます。
 さて、父上の所有されている土地が一筆の土地だとします。この土地をあなたと弟さんで相続すると、二人で共有する状態となります。持分はそれぞれ二分の一です。ところが、共有のままだと、土地を使用したり、処分したりするのに不便が出てきます。使用は持分の割合に応じてしなければなりませんし、処分には共有者全員の同意が必要です。
 そこで通常は、遺産分割の際に一筆の土地をふたつに分けて(分筆して)、ひとつの土地をあなたの単独所有に、もうひとつの土地を弟さんの単独所有します。こうすれば、土地の面積は半分になりますが、それぞれがその土地を自由に使用したり、処分したりすることができるようになります。
 銀行は住宅ローンを実行する際には、その住宅(土地・建物)に担保権(抵当権)を設定します。これは前述の処分に当たりますが、土地が分筆されていないと、その土地に抵当権を設定するには共有者である弟さんの同意が必要となります。万が一、住宅ローンの返済が滞った場合には土地を競売されてしまいますから、弟さんの同意を取り付けることは容易ではないでしょう。しかし、土地が分筆され、あなたの単独所有となっていれば、あなたが自由に抵当権を設定できます。銀行の質問はこのことに係わっているのです。
 相続しても、必ず分筆しなければならないわけではありませんが、弟さんとの共有状態にある限り、あなた一人がその土地に建物を建てたり、まして銀行のために抵当権を設定したりすることは事実上困難でしょう。ですから分筆が求められるわけです。なお、一筆の土地を分筆することと、分筆後のそれぞれ土地を各相続人の単独所有とすることは別の作業となります。土地を分筆しただけでは、それぞれの土地が共有となるだけです。持分を交換し合うことにより、それぞれの土地が単独所有となります。

22.マンションの共有部分に花や植木を置いても大丈夫?

マンションに住んでいますが、隣の人が花やガーデニングの道具などを玄関の前に置いています。突き当たりの部屋なのでいいと思っているようなのですが、これは許されるのでしょうか。

 部屋の玄関の前ということは廊下ということでしょう。マンション内のそれぞれの部屋(○○号室というような部屋)のことを、「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)では「専有部分」と呼んでいます。専有部分を目的とする所有権を「区分所有権」といいます。専有部分といえるためには、その建物の部分が構造上の独立性と利用上の独立性を具えていなければなりません(同法1条)。
 しかし、一棟のマンションはそのような専有部分だけから成り立っているわけではありません。一棟のマンションのなかには「専有部分以外の建物の部分」もあります。具体的にあげれば、廊下・建物(棟入口)の玄関・ロビー・屋上・エレベータ室・階段室などがそれに当たります。ついでにいえば、「専有部分に属しない建物の附属物」も共用部分となります。たとえば、エレベータの箱・配線(本線)・配管(本管)・消防設備などがそれに当たります。
 貯水槽・浄化槽などは建物の外にあっても、「建物の附属物」として共用部分となります(以上につき同法2条4項)。また、区分所有法4条1項は、「数箇の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」を区分所有権の目的とはならないもの、すなわち共用部分と規定しています。
 
 このような共用部分(※1)は区分所有者全員の「共有」に属します(同法11条1項本文)。区分所有者の一部の共用に供される建物の部分(一部共用部分)の場合は、これを共用すべき区分所有者の共有(※2)となります(同項ただし書)。そして、「各共有者は、共用部分をその用方に従って使用することができる」と規定されています(同法13条)。
 部屋の玄関の前であっても、廊下は区分所有者全員の共用部分ですから、廊下としての用方に従って使用しなければならず、一人の区分所有者が自分の部屋の玄関前だからといって独占的に使用することはできません。ですから、そこに花やガーデニングの道具などを置くことは許されません。管理組合からその住民に注意すべきでしょう。
※1 本文で説明した共用部分のことを法定共用部分といいます。このほかに、本来であれば専有部分としての要件を具えている建物の部分や、本来独立している附属の建物も、規約により共用部分とすることができます(区分所有法4条2項)。規約共用部分といわれます。
 
※2 共有といっても、共有部分の持分は専有部分と分離して処分することはできず、専有部分の処分に従うことになります(同法15条)。共用部分の持分の割合は、規約で別段の定めがない限り、専有部分の床面積の割合によります(同法14条)。

23.遺産相続するべき人が死亡した場合の代襲相続とは?

先ごろ、私の父が他界しました。母はまだ元気です。私には姉と弟がいましたが、弟は数年前に事故で亡くなっており、弟には妻と二人の子がいます。父の遺産の相続に当たり、「代襲相続」という制度があることを聞いたのですが、詳しく教えて下さい。

 「代襲相続」という制度は、被相続人(父上)の死亡以前に(相続開始以前に)、相続人となるべきであった子や兄弟姉妹が亡くなっている場合に、その者の直系卑属(子)がその者に代わり、その者が受け取るべきであった相続分を相続する制度です(民法887条2項本文、889条2項)。
 あなたのケースでいうと、弟さんがご存命であれば、父上の相続人は、母上、あなた、姉上、そして亡くなった弟さんの4名です。そして、母上(被相続人の配偶者)が2分の1、あなた、姉上、弟さん(子3名)がそれぞれ6分の1を相続することになります。このうちの弟さんの相続分6分の1が、弟さんの二人の子に相続されるのです。弟さんの妻は代襲相続人にはなりません。弟さんには子が二人いますから、それぞれ12ぶんの1を相続することになります(民法901条1項)。
 注意しなければならないことは、被相続人(父上)の子(弟さん)の子が代襲相続人となるためには、その子が被相続人の直系卑属でなければならないとされていることです(民法887条2項ただし書)。したがって、被相続人の子が養子であり(養子は実子と全く同じ相続権があります)、養子の子が養子縁組以前に出生していた場合には、養子の子は被相続人の直系卑属とはならないため、代襲相続人とはなりません。これに対し、養子の子が養子縁組後に出生した場合には被相続人の直系卑属となるため、代襲相続人となります。
 子の場合には「再代襲相続」という制度もあります(民法887条3項)。これは、代襲相続人(被相続人の孫)も相続開始前に死亡していた場合に、代襲相続人の子(被相続人のひ孫)が相続人となるという制度です。被相続人に子も親もいない場合には、兄弟姉妹が相続人となりますが、再代襲相続は、兄弟姉妹については認められていません(民法889条2項)。したがって、相続人となるべき兄弟姉妹の中に被相続人よりも先に亡くなっていたものがある場合には、その子(被相続人の甥や姪)が代襲相続人となりますが、そこで終わりです。
 
なお、代襲相続という制度は、相続人となるべきであった子や兄弟姉妹が死亡した場合のほかに相続欠格や相続廃除により相続権を喪失した場合にも適用されますが、相続放棄の場合には適用されません。

24.著作権を侵害された場合の損害賠償請求の方法は?

インターネットを見ていたら、私が業界誌に書いた文章の一部が、そのまま無断で掲載されていることがわかりました。あたかも、そのページの管理人が書いているような感じです。なんらかの謝罪を要求したいのですが、どうすればいいのでしょう。

 結論からいえば、これはあなたの著作権を侵害したことになります。著作権とは、要するに「著作者の権利」のことですが、著作権法では「著作者」とは「著作物を創作する者」と定義されており(2条1項2号)、「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています(2条1項1号)。あなたが業界誌に書かれた文章が「著作物」に当たることは当然です。あなたは、あなたが業界誌に書かれた文章の著作者であり、著作権者です。
 著作者の権利には、財産的権利(この権利だけを著作権ということもあります)と人格的権利(「著作者人格権」)とがあります。前者の権利の中心は何といっても無断で複製されない権利としての「複製権」です(21条)。著作権法では、「複製」とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」と定義されています(2条1項15号)。原著作物とまったく同一のものを作り出すことに限られず、実質的に類似していれば複製に該当します。最も、内容から見て誰が書いても似たような表現になるようなものについては、類似しているからといって直ちに「複製」とはいえません。また、偶然に同一の作品が作成されても「複製」には当たらず、既存の著作物(原著作物)に「依拠」して再製されたこと(模倣とか盗用といわれるようなものであること)が必要とされています(最判昭和53年9月7日)。
 以上の説明に照らして、そのホームページのコンテンツがあなたの書いた文章の無断複製に当たるとすれば(通常はそうなるでしょう)、あなたはその管理人に対し、著作権(複製権)に基づき、掲載されているあなたの文章を削除することを請求することができます(差止請求権、著作権法112条)。複製権侵害は一般的に不法行為となりますから(依拠性が認められれば故意があることになるでしょう)、あなたは不法行為に基づく損害賠償を請求することもできます(民法709条)。損害額の算定については著作権法114条に特則が置かれており、少なくとも印税・原稿料に相当する額の賠償を求めることができるとされています。
 なお、謝罪を求めることも自由ですが、裁判に訴えて謝罪を強制することはできません。

母と兄嫁の仲が悪いため、二男の私が母の面倒をみています。もう5年になりますが、兄からは一切援助がありません。生活費の半分くらいはもらいたいのですが、兄は私が母の年金を使っていると思っているらしく、その気はありません。年金は母が管理しているのですが…

 民法は、①夫婦相互間、ならびに②直系血族および兄弟姉妹は相互に扶養義務があると規定しています(752条、877条1項)。法律上、当然に扶養義務を負うので、絶対的扶養義務といわれます。
 また、特別の事情があるときは、家庭裁判所は審判により、3親等内の親族間においても扶養義務を負わせることができます(877条2項)。これは相対的扶養義務といわれます。
 母と子は直系血族の関係にあるので、あなたも、あなたの兄上も、母上に対して絶対的扶養義務を負っています。扶養の程度は、生活扶助義務といわれるもので、自分に余力があれば援助すべき義務であるといわれています。
 具体的な扶養義務は、扶養権利者(母上)が要扶養状態にあり、他方、扶養義務者に扶養能力があるときに、扶養権利者からの請求により発生します。扶養権利者である母上が扶養義務者の一人であるあなたから扶養料を受け取っている事実があれば、扶養権利者からの請求があったとみてよいでしょう。母上が自分の年金で生活を維持できる場合には、要扶養状態にはないことになります。
 同順位の扶養義務者が複数存在するときは、扶養義務者は連帯債務的に扶養義務を負うと解されています。したがって、扶養義務者の一人(あなた)が扶養権利者(母上)に扶養料を給付したときは、ほかの扶養義務者(兄上)に対して、扶養料の一部を求償できることができます。判例も過去の扶養料の求償を認めています。
 問題は、過去の扶養料をどこまで遡って求償できるかです。扶養料(生活費)の性質上、請求時以降の分に限られるとの考え方もありますが、定期給付債権の消滅時効が5年とされている(民法169条)趣旨に鑑みて、調停・審判の申立てをしたときから5年前まで遡って求償できるとした裁判例があります。
 複数の扶養義務者が存在する場合に、当事者間で各自の分担額について協議が調わないときは、家庭裁判所に対して調停・審判を申し立てることになります。最終的には、家庭裁判所が各自の資力その他一切の事情を考慮して、審判で決定します。

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